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シャントって自分の一部だから


09年7月WAMUW・根本隆志シェフ


根本シェフプロフィール
根本隆志(ねもと たかし)
42才男性
・役職 シェフ(元オーナー)
・血液型 B型
・出身 上士幌町
(残念ながら、根本さんはその後WAMUWを辞められました。)





 荒木飛呂彦という漫画家がいる。昔ジャンプ(週刊だったと思う。)の手塚賞という漫画家発掘の場で注目を浴びて、手塚治虫自身にも才能があると言われていた漫画家だと記憶している。漫画をちょっと知っている人なら、ご存知と思うが、荒木飛呂彦の代表作はJoJoの奇妙な冒険だ。JoJoというのが、主人公なのだが、時代が流れると、そのJoJoは変わる。第1部はジョナサン・ジョースター、第2部はジョセフ・ジョースター、第3部は空丞丈太郎(くうじょう・じょうたろう)・・・・とあだ名がJoJoとなる人物が代々主人公なのだ。現在本編JoJoの奇妙な冒険は終了してるが、タイトルを変えて、同じようなパターンで続いている。ストーンオーシャン、そして、現在連載されているのは、スティールボールラン。連載雑誌はウルトラジャンプ(だったかな?)に鞍替えしてしまったが、荒木飛呂彦の世界はぶれることなく、JoJoシリーズは彼のライフワークとなっている。
 そんなJoJoの奇妙な冒険の第2部に出てきた登場人物の一人がワムウという。悪役ではあるのだが、高貴なものの考え方をする部分もあり、そういうあたりが気に入ったのだろう、今回の主役である根本隆志さん(42)は、自分が修行場を開くときに、名前をそのワムウになぞらえて、WAMUWとしたのだった。根本さんは最初から調理の世界にいたわけではなく、オープンするにあたっても沢山の苦労をしているし、オープンしてからも大変なことの連続だったという。でも、お話をしてくださったその様子を見ていると、様々な苦労を引きずっているわけではなく、前向きに考え、楽しそうに話す姿から、人生と同様にカレーも本当に好きなのだな、と理解できるのだった。

 根本さんは、元々はご両親の跡を継いで、上士幌で農家を営んでいたが、経営が大変となり、バス会社の運転手となった。それを機に上士幌を出てきた。その後、トラックドライバーを経て、カレー修行場を開くこととなった。以前、上士幌農協の豆がサービスで出してくださったことがある(09年6月11日の日記参照。)が、なるほどつながりがあるからだな、とわかった。

ちなみに、これらの写真は期間限定で出ていた野菜と4種のお豆カレー。これも美味しかった。豆ファンにはたまらないね!

野菜1
ヘルシー野菜カレー


 元々札幌でスープカレーを食し歩いて、10年前に札幌の修行場で衝撃的なところに出会った。それが運命。その味を十勝に持っていきたくて、脱サラしたそうだ。それまでは、トラックの運転手をしていたが、以前から慢性腎不全はわかっていたので、そのうち透析になるだろうと思っていた、と。実際にオープンする5年ほど前から脱サラするつもりでいて、その背中を押してくれたのは、スープカレーであり、運命的な出会いの修行場だったそうだ。
 同じ健康状態の人とは、お互いになんとなく心が通じる気がする(笑)ということだが、慢性腎不全という状態は尿量が確保できなかったり、毒素を体から排出することができなくなる状態で、症状が進むと薬だけでは対処できなくなり、透析を受けなければならなくなる。シャントという血管をつないだ状態があり、血管が発達して浮き出ているために、透析をしていることはわかってしまう。根本さんも数年前から慢性腎不全で透析中。別にそれを隠そうとはしてない。無理に表に出しているつもりもなく、自然な形でTシャツを着ていたら、わかってしまうこと。と、堂々としている。透析を受けている方の中には、自分が透析を受けていることを隠したがる場合もあるのだが、根本さんは「それが体の一部、生活の一部なのだから、別に隠す必要はない。」と、ハンディにさえ思っていないようだ。しかし、健康問題は当然生活や仕事には大きく影響する場合がある。実際に、08年春に、健康を理由に経営が不可となった。以前はネットで人工透析カレーとたたかれたこともあり、心身疲労したと。しかし、そこから立ち直り、逆に強くなった、と笑顔で語る。経営を断念して、WAMUWを閉めたときにすぐに引き継ぐ人が決まり、経営を譲ったことで心も体も楽だと思う、と。経営者としてのストレスもそれなりのものと、今のオーナーにも気遣いが見せつつ、それまでの自身での経営の大変さにプライドが見られた。そして、経営は譲ったが、味を守るために、日々シェフとして頑張る道を選んだ。普通は下からはい上がるのだが、あえて一歩引いた形となった。それは並々ならぬカレーへの愛があったからだ。
 WAMUWといえば、そのスープの多彩なところもファンを惹きつけて放さないところだ。まさにスープカレーだし、逆に十勝人から見ると「カレー」という概念を覆すものだろう。実際に、札幌でも当初はスープカレーはカレーか否かという議論はあった。今でもあるかもしれない。しかし、スープカレーは存在するし、スパイスを使った料理として同じものとも考えられるし、形状の違いから同じものと言えないということも考えられる。仏太的にはそれが美味しいからそれでいいんじゃないかと思う。ルーカレーとは別のものだけど、スープカレーはスープカレーとして考えて、美味しく楽しめれば最高。根本さんもそのあたりの考え方は似ていて、子供の頃からインデアンのカレーを食していたというのは、一般の十勝人と同じだという。そして、豚丼は新橋、とこってり系が好みのようだ。子供の頃にお父さんに帯広に連れて行ってもらったら、インデアンか新橋、というのが楽しみだったそうだ。


 名実共に十勝を代表するスープカレー修行場のスープは最初から沢山の種類があり、美味しかったわけではない。当初あったスープは完成度が低く、インド風のベーシックだった。これはプレオープンの時(03年3月)に提供されたが、今考えると恥ずかしい、と。(笑)玉ネギなど甘みで旨味を補いたくないという信念があったので、糖度計や塩度計を購入して入念に調べたりもした。糖度は10%以下になるように抑えた。そんな努力が実り、そのうちグランドオープンの時には100と300が完成した。一段階上ると、また新しい壁にぶち当たり、何度も試作を繰り返した。やればやるほどわかってくるが、失敗から学ぶとはどういうことかも経験した。好きなラーメン屋に行き、ラーメンのスープを教えてもらい、参考にしてカレーに応用した。仏太も雑誌で見たラーメン屋のスープの取り方が、ああ、スープカレーと似てると思ったことがある。(仏太は修行場を開いているわけではないが、一応スープカレーを作る。時々最初に会った人に、どこのお店ですか、と聞かれることあるけどね。笑)スパイスハーブスープのブレンドはどれもがよくないと、いいカレーができない。それぞれどこか落ち度があると、ダメになってしまう。とこだわりはかなりのもの。最初は1000のようなスープを作れると思っていなかったそうで、今考えると、野球に例えて小学生とプロくらいの違いがあったと振り返る。今のWAMUWのベースは1日限定20食で出しているスパイスラーメンのものが、そのものだそうだ。(当初のベースとはかなり違うものだ。)
   
 スープの番号順で言うと、100、200、300、400は骨系のシングルスープで、その後、500,600,700がないのは、魚介系のシングルスープを目指していたから。魚介系のシングルスープは、取るのは簡単でも、美味しくするのは難しいと。スープのクオリティーを上げるのに、ラーメンのスープも勉強している。シングルスープはその方が勉強になることもある。そして、800、900、1000はブレンド(ダブルスープ)系だ。単に一緒に色々なものを煮込んで取るというのも一つの手だが、骨系と魚系を分けて別々にスープを取り、それぞれを後から混ぜるというのも味がまた変わるのだ。根本さんに簡単にダブルスープの取り方を教えてもらった。簡単でも、難しそうだし、プロだからまだまだ真似のできないことがあるようで、全ては語られることはなかったが、そのくらい奥が深く、根本さんもまだ極めていないと。鶏ガラが一番楽。豚骨は臭みを抜くのが大変。上手く取れれば美味い。スープが薄いのに旨味を出すのは難しい。だから、あっさり系は難しい、透明なスープは大変、と。魚介系は昆布、椎茸、カツオなどで出汁を取る。前者と後者を50:50でブレンドしているが、まだまだ進化できそう。常連さんはそのあたりのコンセプトを理解してるそうで、やはりそういうあたりはかなうはずもない。オープンして3〜4年目に1000ができた。その後、1000はverIII→Ex→NEXTと進化した。しかし、1000を超えるものはできてない。
 スープの勉強をすればするほど、他の修行場のスープがよくわかるようになった。いいものを使って採算度外視すれば、美味しいものを作ることはできる。しかし、採算度外視では、自分もスタッフも生活できなくなってしまうので、どこかに線を引かないと行けない。高くして、修行者に負担を強いるわけにも行かないから。その気概はどこかの修行場に教えてもらいたい言葉でもあった。

 スープのアイディアは好きな銭湯(温泉)でゆったり湯に浸かっているときに思いつく。リラックスしてるのがいいのだろう。思いついたら、とりあえずためす。誰かのもとについて修業したわけではないから、既定の考え方ではない。スープが100番単位なのは面白い。本当は言葉で表したい。しかし、それは十勝ではまだ早いだろうと判断して、簡単なナンバーリングによるものにした。でも、単純に1番2番・・・ではない。まあ、それだと辛さと間違えてしまいそうだけど。当時クイズミリオネアが流行っていて最終的にはミリオン(100万)がスープの完成形と考えているが、とてもそれにはおよばないので、100という数字から開始したと、やはり謙虚な姿勢は変わらない。所詮はその実力しかない、と控えめ。志はミリオンで、今のところ1000は最高だから、それが一番のスープと言うことになる。一番人気が1000というのも頷ける。ちなみに、実際の修行場で一番人気で、濃厚なEx1000とあっさり1000では6:4の割合で出るそうだ。

以前のフィッシュフライカレー。現在とどこが違うかわかるかな?
 のアイディアは、札幌で食し歩いて、インスピレーションをもらってくる。しかし、オーナーが代わり、コスト削減でがくんと味が落ちた。仕入れ先が代わり食材が変わったためだと言う。それでもその範囲内でやっていくのがプロということで、アイディアを他のスタッフと出し合いながら凌いでいった。仏太の好きなラムも、価格設定の考えがオーナーと合わないために出せないでいるようだ。フィッシュ、アサリなども量が半分になってしまった。野菜も正直、それまでのWAMUWを知る人には納得のいくものではない。そのあたりは根本さんもわかっている。そんなジレンマを抱えながらも、日々新しいアイディアを形にして挑戦し続けている。
 
ホタテとエビをデリバリーしてもらった。わがまま言ってスープを別にしてもらい、具だけだとどんな感じになるか見てみた。


 根本さん自身ポークが一番好きで、でも本当はバラ肉と内ももを使いたいのだけど、バラ肉はコストが高いために使えずにいる。今はバラ肉と内ももの中間くらいの前足を使っていると。豚と言えば、十勝は豚丼。根本さんは味が濃くて苦めのが好き。新橋とか。(笑)

 実はチキンはあまり好きじゃないというのは意外だった。色々なチキンのメニューが出ているからなのだが、苦手な根本さん自身が食せるように調理をしたと。なるほど。魚介系も札幌の影響を受けた。色々な魚、アサリがある。安いのから、国産まで。美味しさと利益を考えて選び作らなければならない。その語り口も熱い。新メニューのベーコンとキャベツは店長さんが札幌で食して感銘を受けたので始めた。

 子供の頃からカレーが好きで、帯広に出たら、楽しみはインデアンのカレーか新橋の豚丼だった。インデアンは辛口が多く、安くて美味いのが魅力の一つ。ピンクの添え物が好き。ちなみに、WAMUWでは辛口と大辛の中間くらい。大辛や極辛、そして、ハバネロトッピングなどは根本さんの舌がバカになってしまうことや、そこまでして美味しいと思わないということで、特に極辛は味見をしてないそうだ。(笑)それでもあれだけ美味しくなっちゃうんだから、凄いよなあ。
 最近、サイドメニュー、ハーフ、キッズルーが出た。オーナーの方針でキッズルーが出た。それはおそらくファミレスのようなイメージ。そのあたりが今までのWAMUWと違うところだろう。店内のイメージはそのままに見えるが、呼び鈴をつけるなど、合理化を図っている部分などが、それまでとちょっと違っている。何が修行者にとって一番なのかという考え方が違っているのだろう。現在、根本さんも一番の目標は修行者に気に入ってもらえるようにしたいということだ。サービスの仕方も完全に平等か常連びいきかというジレンマもある。サウナ、銭湯も常連に対する態度とそうじゃない人は別。ラーメン屋の頑固親父に憧れるところもあり、ちまたで無愛想と言われたこともあると。色んな意味で、自分は経営者向きじゃないから、とうつむいたが、負けたくない、のれんを残したいという気持ちが前進させるのだそうだ。
 最後に聞いた。目標は、
これからもカレーにはたずさわっていたい。
小さな店を持って、お客さん(修行者)と密に接するカレー屋をやりたい。
照れながらも、そうはっきりとしゃべって、根本さんは、まだまだ話したりない様子だった。これからも、修行者を中心に考えた、いつもの根本さん流を期待したい!(追記:残念ながら根本さんは、その後WAMUWを辞められました。)




参考サイト・ブログ
WAMUWの公式サイト
手塚治虫
JoJoの奇妙な冒険の公式サイト
スティールボールランの公式サイト





修行場データ
WAMUW
帯広市西1条南5丁目17-6
0155-26-0165
http://www.aim-company.net/wamuw/
11:30-23:30LO
火曜定休(火曜日祝日の時は営業して翌日休み)
修行場・十勝「WAMUW」参照。)





10周年記念企画トップ
09年7月WAMUW・根本隆志シェフ
09年8月Shambhara天竺・中山一郎マスター
09年9月Easy Diner・立石貴裕店長
09年10月ふじや・加藤美華オーナー
09年11月インデアン音更店・遠藤和恵さん
09年12月タイランド・相澤和正オーナー
10年1月ろそろそ・野左掛兄弟
10年2月SAMA帯広店・河村哲裕オーナー
10年3月そん徳・小内勝敏マスター
10年4月カトマンドゥ・奈良一彦マスター
10年5月ピア21しほろ・式見貴光シェフ
10年6月潮華・早坂信美マスター
11年2月ナマステー・木幡夫妻
11年12月カレーリーフ・相馬鎮徹オーナー

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